おしらせ

超低PM排出に貢献する最新の計測技術

 ディーゼル車から排出されるPM(粒子状物質)の規制レベルは、ここ十年間(2000年からの10年間)で10分の1以下まで強化されてきました。現時点におけるディーゼル車のPM削減は一段落し、これからは低PMを維持したままで低燃費化(CO2削減)が要求される時代となってきました。一方、ガソリン車では低燃費化のため、燃料直噴と過給を導入して排気量を低減するダウンサイジング化の流れがみられますが、PM排出の多い直噴ガソリン車にもPM規制の導入が迫り、その対応策が求められています。低燃費化とPM排出には多くの関連があり、PM排出の正確な把握と適切な排出削減手法の確立が低燃費につながっています。ここでは超低PM排出に貢献する計測技術をいくつか紹介します。

PMの高速応答計測

 自動車の排出ガス規制では、実際の使用状況を模擬した加減速や停止が含まれる過渡運転モードを、シャシダイナモでの走行もしくは、エンジンダイナモメータで再現させています。エンジン始動時や高負荷時にPM排出量が多くなることは予想されるところですが、詳細なタイミングや排出量を把握するには速い応答性を持ったPM計測器が必要となります。
 自動車排ガスに対応した高速応答のPM計測器は、ここ数年で大きく進歩してきました。エンジンや後処理装置の研究開発で使用される最新の粒度分布測定器には高倍率の希釈器が内蔵され、エンジンから排出されるPMを直接採取することで速い応答性(200ms)を実現しています。過渡運転モードにおいては、応答性の面で認証試験用のPM測定器(粒子数計測器)との違いが歴然であり、PM排出ポイントの特定が容易となります。
 さらにソフトウエア処理によって核生成モード粒子(燃料、潤滑油に由来する粒子)と凝集モード粒子(固体すす粒子)の識別が可能となったことで、粒度分布から質量濃度への換算や、欧州規定(PMP)と相関の高い固体粒子数計測が行えるようになっています。
 アプリケーションの広がりにより、従来のスモークメータやオパシメータの役割を補完するなど、高速応答のPM測定器が一般的な排ガス計測器の一つになりつつあります。当初、このようなPM測定器のユーザは研究機関に限られていましたが、現在では自動車メーカから部品メーカへの広がりが徐々に観られるようになってきました。

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微粒子粒度分布計 DMS500 MkII 

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効率的なDPFテスト

 PM削減にDPF(ディーゼル微粒子フィルタ)が寄与する割合は大きく、エンジンから排出されるPMの99%程度を除去しています。しかし、DPFは捕集したPM(特に煤)がある程度堆積した時点で再生(燃焼)する必要があり、排気管に直接燃料を噴射するなどの方法でDPFを高温にし、触媒の活性化とPMの燃焼を行っています。DPFメーカは再生時の燃料消費削減のため、より低い温度でPMが分解する触媒の開発を行っている段階で、DPF単体での効率的なテスト環境が望まれていました。

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DPFテストシステム DPG

 DPFテスト装置はバーナとブロワを組合せ、ディーゼルエンジンの排気とほぼ等価なスート(煤)特性、スート濃度、実エンジン相当流量、および等価温度を発生する装置です。エンジンを用いたスート発生の場合、周囲環境の変化やスートの堆積でDPFの圧力損失(差圧)が増大すると、エンジンから発生するスート濃度や流量、温度が変化する等の諸問題が発生します。本装置では、軽油バーナの空燃比を精密に制御することで安定したスートの発生と、フィードバック制御によって流量と温度を一定に保つため、高い再現性でのテストが可能となります。
 スートをロード(堆積)させるだけでなく、高温で低いスート濃度の燃焼ガスをDPFに送り込み、DPFの再生を行うこともでます。このテスト装置にはDPFの差圧計測やDPF各部の温度測定機能が備わり、DPFの総合的なテストを行うことが可能となります。 エンジンを用いたテスト方法に比べ、次のようなメリットが得られます。

  ・再現性の高いスート発生 ・安価な設備、運転コスト
  ・設定したスケジュールによる自動運転

 DPFメーカはこのテスト装置の導入により、効率的なDPFの試験が可能となります。

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精度と再現性の高いPMフィルタの秤量

 現在、PM排出量の規制値は、フィルタに捕集されたPMの重量で規定されています。これはエンジン、もしくは車両から排出される排ガスを空気で希釈した後、その一部をフィルタに導いてフィルタ上にPMを捕集するものですが、低PM化の進行に伴い、捕集されるPMの重量はフィルタ自体の重量の約1/100以下となっています。このためフィルタの重量測定には、細心の注意を払った精密秤量が求められています。
 PMフィルタの重量測定に関する 米国EPAや欧州のEURO5の規定に準拠した自動計量装置で、PMフィルタを収納するスペースと収納場所から、ロボットアームを用いてフィルタを精密天秤に移動させる機構を備えています。2次元バーコードが印刷されたフィルタを使用することで、フィルタ秤量作業の自動化とパソコンによるデータ管理を行うことができます。 作業者が新品のフィルタを装置に装填すると、装置はバーコードの読み取りとフィルタ自身の重量を計測し、データベースに登録します。
 作業者は登録が完了したフィルタを装置から取り出し、PMの捕集を行った後、装置にフィルタを戻します。この装置には200枚以上のフィルタを収納することができるため、一括した自動秤量により次のようなメリットが得られることになります。

  ・フィルタの取り違えなどの人為的エラーの排除
  ・安定した秤量環境時(深夜など)の自動計測
  ・処理能力の向上とデータ管理の自動化

 温度と湿度が管理されたチャンバ内に設置した場合、浮力補正の自動化、静電気の影響を最小限にする機構の採用により、1μg以内の秤量再現性が保証されることになります。 本装置は米国EPA(環境保護庁)やCARB(カルフォルニア大気資源局)等で採用され、更に民間企業による採用へと広がりつつあります。

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PMフィルタ自動計量システム AH225 

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今後の展望

PMに関連する計測機器は、規制強化が進行中の建機などの特殊自動車や、船舶の分野でも必要性と有効性が高まってくることが予想されます。またDPFなどの後処理装置の異常検知や、制御の最適化を目的としたOBD(車載式故障診断装置)用途で、簡易かつ安価なPM計測機器の登場も期待されるところです。

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